万葉集校本データベース作成委員会
委員長
坂本信幸
奈良女子大学文学部教授
委員
毛利正守
大阪市立大学文学部教授
委員
内田賢徳
京都大学総合人間学部教授
委員
奥村悦三
奈良女子大学文学部教授
委員
西端幸雄
大阪樟蔭女子大学学芸学部教授
委員
生田周史
大阪成蹊女子短期大学教授
委員
上野 誠
奈良大学文学部助教授
委員
村田右富実
大阪女子大学人文社会学部人文学科
日本語日本文学専攻助教授
委員
新谷秀夫
高岡市万葉歴史館研究員
プロジェクト
管理協力
鈴木榮一
岡山市企画局総合政策部文化政策課
デジタルミュージアム開設準備室長
本データベースは、寛永版本の画像データを基軸とし、歌首単位による本文校異を、万葉集の各種古写本の歌句部分を画像データ引用することにより、古筆比較研究を可能とするデータベースの試作版である。また、注釈データ(古注釈から現代注釈書まで、歌句単位の訓み解釈や、各種注釈の要旨)も用意し、電子万葉集校本として各種古写本・注釈書の比較参照ができるデータベースを指向している。
古代日本の文化と日本人の精神生活を窺うべき古典として、また、当時の事物や社会の様相を研究するために欠かすことのできない第一級資料として、古来その重要性が広く江湖に認められる万葉集は、原本が現存しないため、その原文復元には大変な困難がある。古典の基本的研究は本文の吟味からはじまり、本文の吟味は諸本の対校によるといわれる。校勘は古典研究の基礎であるが、古写本でしか残っていない万葉集においては殊にそれが重要である。かつて明治45年文部省文芸委員会において、国家の事業として万葉集諸本の比校と定本編纂をする事となり、大正13年に刊行された「校本万葉集」。そして、我が国の古典研究における単語索引の先駆けとして、万葉集に使用された単語の全てが検索できる「万葉集総索引」(昭和4〜6年)がある。しかしながら、現在の古典研究はこれらの事業の上に立ってさらに深化してきており、本文研究においても詳細を究め、「校本万葉集」だけでは十分とはいえず、また「校本万葉集」自体に誤りがある箇所も見られ、各種古写本を直接見て比校すべき必要が生まれている。とはいえ、それは煩雑を極め、多大な時間と労力を要し、容易ではない作業である。
本データベースが作成されることにより、瞬時に直接古写本にあたって比校できるようになり、一層精緻な本文校訂・付訓が可能となり、古写本伝来の過程における誤写・誤脱・誤読の特徴が明らかになり、本文校訂・付訓の作業を能率的にかつ正確に行うことができることになる。また、これまで誤られていた本文や付訓を訂正することが可能となり、さらに、難訓歌とされている歌の理解も進めることができる。 加えて、そのデータの根幹となる基本歌データは、「万葉集索引」の電子版というべき機能を備えるもので、飛躍的に進んだ現水準の本文・訓によるデータ入力により実用性を高め、しかも各種データ(古写本画像データ、注釈データ)とリレーションすることにより、電子校本万葉集とでも呼べるような機能を備えることになり、広く国文学研究者の利用に供することができることとなる。